02/08/2019 Live Report @ Minami Aoyama Mandala

『岩田桃楠 2nd Live』

2019年2月8日@東京・南青山MANDALA

岩田桃楠名義でのワンマンライブも2回目。昨年10月に行った1stライブの会場は横浜だったので、“Shamisen Tokyo”を標榜するこのプロジェクトとしては満を持しての東京都内で開催するライブである。今回の会場・南青山MANDALAは、過去に対バン形式で一度出演したことのあるライブハウスで、岩田自身ぜひまたここでやりたいと希望していたハコ。以前やったことのある場所でもあるし、サポート・メンバーも前回の1stライブと同じメンツ。そうした意味では、この日のライブはあまり不安な要素もなく臨めたのではないだろうか。“1stライブと比べてどんな変化を見せてくれるのだろう?”“新曲も聴けるのかな?”など、いろいろな期待を抱きながら開演時間を待った。

オープニングは前回と同じく「津軽じょんから節」。この曲のイントロ部分、同じ音程の音に徐々に気合いを込めていく感じは、何度聴いても気持ちが上がる。時に内省的に、時に激しく。テンポをタメるのも突っ込むのも自分のパッション次第という、この自在感はまさに独奏の魅力だ。2曲目は「東京の夜をイメージした」というオリジナル曲「BLUE SPEAR」。岩田がイントロのリフを弾きはじめると、キーボードとパーカッションがごく自然に寄り添うように入ってくる。この曲も1曲の中に動と静が同居するナンバーで、ちょっとしたブレイクでの緊張感とサビでの開放感との対比が心地よい。1stライブ時の演奏より少し余裕も感じられるような気がする。

「昨年初めてソロ名義でのライブをやってから4ヶ月。さらにパワーアップしたステージをお届けしますので、最後まで楽しんでいってください」と挨拶し、サポートの内村勇希(key)と佐野幹仁(per)を紹介。そして3曲目はおなじみ「マイ・フェイバリット・シングス」。アリアナ・グランデ「7 rings」の原曲?と近ごろ話題を集めるこの曲だが、そもそもは1959年のミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の中の1曲。その後、大御所サックス奏者、ジョン・コルトレーンがカバーしたことでジャズのスタンダード・ナンバーにもなったが、世界中のミュージシャンやボーカリストがカバーしている名曲中の名曲だ。岩田いわく「小学生のころ合唱団に入っていたんですけど、映画「サウンド・オブ・ミュージック」を何十回も何百回も観てこの曲をカバーしました」とのこと。そんな思い入れもあってかこの日の演奏も秀逸で、竿の端から端まで縦横無尽に弾き倒す様は圧巻。さらに、パーカッションがリードを取るパートではリズムが裏になったり表になったり、3人が目で合図しながら音で会話していく姿はフリージャズ的な巧みさを感じさせた。

4、5曲目はサポートの2人が退場し、岩田の独奏で「秋田音頭」と「秋田荷方節」を。ゆったりしたフレーズなればこそ、三味線の音色の多彩さや色気が味わえる楽曲だ。ダウンピッキングとアップでは同じ糸の同じ音程でもニュアンスが違うし、撥で糸をはじいてから左手をスライドアップorダウンさせることでたおやかな風情を表現してみせる。かと思えば今度は曲調が一転、細かいフィンガリングの速いパッセージを披露。左の運指だけではなくて、右手の撥さばきも驚くほど速く激しい。これは表現力というより技巧・速さを問われる部分だが、そこも見事にキメてみせた。

続く「mimimum」は1stライブでも演奏されたセッション要素の強いナンバー。「最初と最後のテーマは決まっているんですが中身はほとんど即興。照明さん・音響さん・幹仁との4人の即興を楽しんでください」との言葉通り、演奏は自由かつスリリング。佐野も素手でシンバルを叩いていたと思ったらブタの人形をスクイーズしてブーとかピーという音を入れたり、スライド・ホイッスルをコミカルに使ったり、何が出るやらわからない。岩田もソロ回しの途中で「さくらさくら」のメロディーをフィーチャーするなど、インプロヴィゼーションの応酬。曲の展開に合わせて照明も目まぐるしく動いたり色を変化させたり。演奏後「反射神経で音楽してる感じ。リハしてないんです。だからこそ楽しいんですけど」と言っていたが、このクラスのミュージシャンになるとまさに頭で考える前に体が動くのだろう。スポーツ選手ばりの反射速度と感覚を楽しませてもらった。

中盤にはちょっと長めのMCで、自身の音楽性が生まれたいきさつを振り返った。藝大では長唄三味線を専攻したこと。藝祭セッション企画の三味線奏者に選ばれたが専攻の演奏会とバッティングしてしまい、藝祭を優先したことで教授の怒りをかった結果、休学したこと。卒業演奏会でおばあちゃんが泣いてくれて、伝統で泣いてくれる人がいるんだと感動したこと。それらを踏まえ「伝統があって新しいことがある。だから伝統も勉強するし弾く。でも僕は伝統に縛られずに自分のしたい事を提示できるアーティストになりたい」と、“Shamisen Tokyo”プロジェクトで目指す音楽性の基盤を改めて伝えた。そして「そんな気持ちを曲にしたので聴いてください」と「雨粒」「浮遊」を2曲続けて。

ローズピアノを思わせる甘いミドルトーンのキーボードリフで始まった「雨粒」は、イントロだけ聴くと80’sっぽい雰囲気。そこへ情緒のある三味線の音が主旋律を奏でていくのだが、都会的で洋風なバックの演奏と和の情緒との取り合わせが面白い。なるほど、これが“伝統と新しさの共存”の一つの形なのだなと実感。また、パラパラとした感じの三味線のフレーズはまさに雨粒が空から落ちてくるようなイメージで、音による具現化としても興味深く感じられた。一方「浮遊」は曲のタイトル通り空間に漂うような楽曲。ホワンとしたキーボードのコードに、抑えたリズム、三味線の演奏も優しげで、ゆったりとたゆたうようなミディアムだ。三味線が奏でるメロディーは半音の動きを多用する斬新なもので、これはいわゆる“伝統”や“和”とは正反対な性格をもつ旋律。三味線自体もぐっと“洋”に寄せたアプローチの作品だと言えるだろう。

ここで急きょ予定になかった「スペイン」をはさんで、10曲目は「京都の民謡なんですけど、ピアノ・フィーチャーでアレンジしました」という「竹田の子守唄」。結果、この日のライブではこの曲が最も存在感を放っていたように思う。背景には木の枝をかたどった切り絵のような映像が投影され、それだけで木漏れ日の中にいるようないい雰囲気。東洋的な美を感じさせる枯れた三味線の音とピアノ、そして彩りを添える程度の控えめなパーカッション。さらに蝉時雨の音が時々重なっていたのも効果的で、今まで見たことのない独自の世界観を作り上げるのに成功していた。

本編ラストは、スティーヴィー・ワンダーの名曲「迷信」をカバー。あんなファンキーな曲を三味線で?と最初は意外に感じたが、蓋を開けてみたらこの選曲は大正解だった。オリジナルではイントロのフレーズはクラビネットで演奏されているが、これを三味線で弾くととてもリズミカル! 三味線のサステインの無さが逆に吉と出たというか、アタックが効いていて歯切れの良さが半端ない。このノリには会場も大盛り上がりで、それに応えるかのようにメンバーも派手にやってくれる。キーボード・ソロではピッチベンドで音を揺らしたりグリッサンドをかましたり、飛び道具的な技も。それを受けての三味線ソロも超エモーショナル。そして全員ですごい勢いで加速していき、エネルギー全開でフィニッシュ。拍手の嵐の中、本編は大団円を迎えたのだった。

アンコール曲は宮沢賢治が作詞したという「星めぐりの唄」で、この曲に、映画「未知との遭遇」の宇宙人との交信シーンで流れる有名な信号音のフレーズを合わせてみようという試み。キュイキュイというスペーシーな音と例の信号音ですっかりSFなムードの中、ゆったりした三味線のメロディーが重なる。ちょっと沖縄っぽいかなと感じるくらいのんびりした演奏で、最後にほっこりした余韻を残してくれた。それにしても1stライブのアンコールも「見上げてごらん夜の星を」だったが、アンコールでは“星”がらみの曲をやると決めているのだろうか。そのうち訊いてみたい気もする。

1stライブのMCではまず“Shamisen Tokyo”プロジェクトについて語った岩田だが、この日のトークでは自身の過去やアーティストとしての思いなどをたくさん届けてくれた。今まで知らなかったことを知り理解が深まったことで、彼の演奏や音楽性により近づけたように感じられたライブだった。

取材・文=舟見佳子

写真=野田雅之

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